浅葱の桜



結局、私はそのまましばらく開放されることはなかった。


眠気に負けて、舟を漕ぎ出してようやく解放してもらった。


そして、その翌日。



「は、はああああ!? な、何ですかそれ!」



……ああ。そういう事ですか。昨日のあの疲れ具合は……。


今日、幹部を呼び出して話されたのは明日から竹田街道に会津藩と共に出動することらしい。


長州の入京を防ぐために街道で待ち伏せするとか。


土方さんが苛立ってるのはその具体性のなさなのだろうか?


期限が決められてる訳でもなく、具体的な対応も示されていない。


池田屋事件後、新撰組は一躍名を挙げたけれどやっぱり浪士集団でしかないし。


出来る限り会津藩からの信用は勝ち取っておきたいのだろう。


そのために駆けずり回る土方さんには感服しかない。



「で、その為に回す人員を発表する」



数刻後。



「信じらんない……」



木刀を振りながら恨み節を吐く沖田さん。


そう。沖田さんは今回の任務から外されてしまったのだ。


まだ体調が万全じゃないと判断されたことに納得がいかないらしい。


この間額を割られる大怪我を負った藤堂さんが行くから余計なのかも。


汗を吹きながら流された視線に動きが止まる。






……気のせいか。ジトっと見られた気がしたけど。


結局ズレたし。


最近自信過剰気味?


辺りを掃く箒を持ち直すと落ちている葉っぱを掻き集めた。


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