浅葱の桜

辛くなんて……ない




「ひめさま! おめしかえのじかんです!」

「あ……もうそんな時間なのね。分かったわ。他の人を呼んできてくれる?」

「わかりました!」



パタパタと可愛らしい足取りで出て行った女童の背中を目で追いながら思わず私はため息を零した。


ここに来てどれ位経つのだろう。


今までに見たことのない豪勢な屋敷に、身につけたこともない高級そうな着物の数々。


世話される側であった私が世話されるなんて……考えてみたこともなかった。


元に今その状況なんだけど。


1日に何回着替えさせるのか。


切るのを面倒臭がって伸ばしていた髪を丁寧に梳かれるとこしょばゆくて仕方ない。


前は手櫛で済ませることが殆どで梳いてもらったのも沖田さんぐらいだ。


……はぁ。


まだ引きずってる。


もう会うことは出来ないのに。


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