『それは、大人の事情。』【完】

すっかり話し込んでしまい気付けばドレス選びの時間が迫っていた。慌ててカフェを出て式場に急ぐ。


係の女性に案内された部屋には、純白のウエディングドレスから色鮮やかなカラードレスまで豊富に取り揃えられていて、関係ない私まで興奮してしまう。


夢中でドレスを選んでいる佑月の横で、私だったらどれがいいかな?なんて、佑月そっちのけでドレスチェックをしていた。


私もこんな素敵なドレスを身に纏い真司さんの妻になる日が来るんだよね。待ち遠しいな……


こっそり頬を染め高鳴る胸を押さえる。


そして、ドレス選びを始めて一時間。佑月が何着もドレスを試着し、ようやく気に入ったドレスを見つけた様で、姿見の前に立って何度もシルエットを確認してる。その姿をデジタル一眼レフで撮影する理央ちゃん。


佑月にあれこれポーズの注文を付け、まるで本物のカメラマンみたいに真剣な顔でシャッターを切っている。そして、撮影した内容を三人で確認し、全員一致でそのドレスに決めた。


佑月が係の人に説明を受けている間、私は理央ちゃんが撮った佑月の写真を何度も見直す。


「理央ちゃんたら凄いね。もうプロみたい」

「いえ、そんな……」


照れ笑いして嬉しそうな理央ちゃんだったが、急に表情が変わり、私の耳元で囁く様に言う。


「あの……さっきの白石君の事なんですけど、あのモデルの件も気になるんですが、白石君本人の事も気になっちゃって……梢恵さんが良かったら今度、皆でご飯食べにいかないかって誘ってみてくれませんか?」


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