『それは、大人の事情。』【完】
だって、それを認めたら、私は白石蓮が好きなんだって言ってる様なものだもの。そんなの有り得ない。
私には、結婚を約束し、同棲している真司さんがいる。それに、この子は私より十歳も年下の子供。恋愛対象にしちゃいけないレベルでしょ?
だから私は、彼に興味なんてないってアピールするつもりで、理央ちゃんの名前を出した。
「それで、理央ちゃんの事はどうするの?せっかく誘ってくれたんだからご飯食べに行ったら?」
「ど~しようかなぁ~……」
「理央ちゃん会いたがってたよ。もしかしたら、久しぶりに再会した理央ちゃんと何かいい事あるかもよ?」
「いい事?」
白石蓮の眉がピクリと反応した。私が何を言いたいのか察した様だ。
「じゃあ、ご飯食べに行ってもいいよ。でも、梢恵さんも一緒に来るってのが条件。どう?」
「それは……無理だよ」
今の自分の状況を説明し、とても外出なんて出来ないって断ると、彼は平然とした顔で「だったら、今日行こうよ」なんて言う。
「せっかくここまで出て来たんだから、ついでに夕飯食べて帰れば?」
「えっ……でも……」
渋る私に、早く理央ちゃんに電話しろと執拗に迫ってくる。仕方なく理央ちゃんに電話すると、予想以上に喜び、即OKという返事が返ってきた。
「俺、今日は六時にバイト上がらせてもらうからさ、それまでゆっくりしてって」
爽やかな笑顔で食べ終わったピラフの皿を持ち仕事に戻っていく白石蓮。その背中を見つめ私は複雑な心境だった。
なんか妙な展開になっちゃったな……