『それは、大人の事情。』【完】

「蓮は、高校を卒業するまで僕の実家に居たんだよ。結構な田舎でね、外人なんてテレビ以外で見た事ないって人がゴロゴロしてる様なとこでさ、あの風貌だから色々言う人もいてね……」

「あ、そういう事ですか……」


オーナーが言ったコンプレックスの意味が分かり、バカ笑いした事を後悔した。


「姉は離婚した後、蓮を連れ実家に戻っていたんだけど、二年後に病気で亡くなってね、蓮を育てたのは僕の母親。つまり、蓮の祖母だったんだ……」


オーナーは憐れむ様な目で白石蓮を見つめ大きなため息を付く。


―――その頃、オーナーもこっちに出て来てたばかりで生活が苦しく、仕送りも出来ない状態だったからオーナーのお母さんがリゾートホテルの清掃の仕事をして蓮を育てていたらしい。


でも、収入は多くはなく、生活はギリギリ。蓮もそれは分かってた様で、何かを買ってくれとネダった事は一度もなかったそうだ。いつも一人で本を読んでる物静かな少年だった。


だから、オーナーもオーナーのお母さんも、聞き分けのいい手の掛からない子供だと思っていた。


「でも、違ってたんだ……後で聞いた話しなんだけど、本当は、友達とゲームして遊びたかったって。けど、そんなの持ってないから仲間に入れてもらえなかったらしくてさ。

それに、見た目がああだから、いじめられてたみたいでね。何も言わない子だったから僕も気付かなくて……可哀想な事をしたよ」

「そうだったんですか……」


屈託のない笑顔で女性客と楽しそうに話してる白石蓮に、そんな過去があったなんて思いもよらなかった。


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