『それは、大人の事情。』【完】

程なく居酒屋に到着し、タクシーを降りるが、理央ちゃんの姿はない。仕方なく店に入って理央ちゃんを待つ事にした。テーブル席に案内され、先に私が椅子に座ると彼が当然の様に隣に座る。


「ちょっと、どうして隣に座るの?」

「だって、三人じゃない。どちらかに二人座らないといけないでしょ?」


確かに彼の言ってる事は間違ってない。でもこんな時って、向き合って座るものじゃないの?なんて考えていると、理央ちゃんが居酒屋に入って来て、私達を見つけるなり猛ダッシュで駆けてきた。


昼間に会った時の理央ちゃんはラフな格好で、ほとんどメイクなんてしてなかったのに、今目の前に居る彼女は、大胆に肌を露出したキャミソール姿にバッチリメイクだ。


その気合いの入った姿を見た瞬間、理央ちゃんは白石蓮が好きなんだと確信する。白石蓮も専門学校時代の友達の事が気になっていたようで、理央ちゃんにあれこれ質問して楽しそうに笑ってる。


いい雰囲気じゃない……て思いながら久しぶりのビールを味わっていたんだけど、一時間ほど経った時、チューハイを飲んでる二人を見て、ふと思った。


「ねぇ、二人はもう二十歳になってたっけ?」


こんな若い子とご飯食べに来る機会なんてないからすっかり忘れてたけど、この子達、まだ未成年なんじゃ……


「ご心配なく~私はもう誕生日きたから二十歳れすよ~」


虚ろな目をした理央ちゃんがそう言うと、突然、バタリと大きな音を立てテーブルに突っ伏し、寝息を立て始めた。


あ、ヤバい。潰れた……


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