『それは、大人の事情。』【完】
「でもさ、梢恵があの子の写真のモデルになるって事、理央には内緒にしといた方がいいよ」
「なんで?」
「だって、理央はあの子に惚れてるんだもん」
やっぱり、そうか……白石蓮と三人で飲んだ時の理央ちゃん、気合い入ってたもんな……
「なんでも、この前の土曜日、彼の誕生日だったらくしてね、プレゼント渡しに行ってたみたいだよ」
「えっ……そうなの?」
じゃあ、私が嫉妬したあのプレゼントの主は理央ちゃん? ……って事は、私の前に彼と会ってたのは理央ちゃんって事になる。
あの二人がそうやって会ってたなんて知らなかった。白石蓮はそんな事、一言も言ってなかったもの。どうして黙っていたんだろう? 理央ちゃんなら私も知ってるんだから言ってくれればよかったのに……
「―――ず……え、ねぇ? 梢恵ってば!」
「えっ、な、何?」
「何難しい顔して、ぶっかけうどん睨んでんのよ? 早く食べないとうどん伸びちゃうよ」
「あ、うん……」
あぁ~バカバカ! 私ったら、白石蓮をまるで自分の彼氏みたいに思ってた。あの子がいつ誰と会おうと、私がとやかく言う事じゃないのに。
気付けば彼の事ばかり考えて、勝手に嫉妬したりしてる。なんだか自分で自分がイヤになる。あぁ自己嫌悪。
すっかり落ち込んでいると、うどんを食べ終えた佑月が優しい眼差しを私に向けた。
「梢恵とこうやって、バカな事言いながらランチ出来るのも、もうちょっとで終わりだね」