『それは、大人の事情。』【完】
佑月も真司さんの態度が変だと思ったのか、眉を寄せ首を傾げている。
「今のなんなの?」
「さぁ~?」
私も肩を窄め小さく首を振る。そして、缶コーヒーを買う為の小銭を手に立ち上がろうとすると佑月が右手を出し「コーヒーなら私が買ってきてあげるよ」なんて優しい事を言ってきた。
「大丈夫だからいいよ」って断ったのに、佑月は私の肩を抱き、わざわざ自販機まで付き添ってくれる。
「こんなに親切にされたら後が怖いな」
横目で佑月をチラ見して自販機から缶コーヒーを取り出すと、オフィスのドアが開き、明るい声が聞こえてきた。
「失礼しまーす」
その声を聞いただけで息が苦しくなり、熱いモノが一気に体中を駆け巡る。
「あら、カメラマンのハーフボーイじゃない」
佑月に茶化され「チース!」って、軽く挨拶してるが、彼の視線は私に向いていた。そのシャイな眼差しは、更に私の頬を熱くする。
「ねぇ、聞いたよ~梢恵をモデルに写真を撮るんだって? ヌードじゃないの?」
ズバリ聞く佑月に、呆れた様にフッと笑った白石蓮が淡々とした口調で言う。
「そんな写真撮ったら部長さんに半殺しにされるでしょ? 普通の写真だよ」
「なんだ。やっぱそうなのか。梢恵って、結構いい体してるんだよ。胸もお椀型でいい形してるし、お尻もまだ垂れてないしさ~」
やたらテンションが高い佑月。でも、白石蓮はシラッとした顔で仕事を終えると空き缶が入ったポリ袋を持ちオフィスを出て行った。