『それは、大人の事情。』【完】
―――そして、二日後の昼休み。
まだ佑月とはギクシャクしていて、今日のランチは誰も居ないオフィスで一人、コンビニ弁当だった。
さっきまで私の頭の中は気まずくなった佑月の事で一杯だったけど、今は、それどころじゃない。
食べ終わったお弁当をデスクの隅に押し退け、ため息混じりにスマホをデスクの上に置く。
「困ったな……」
私が困惑していた理由は、白石蓮から届いたラインのメッセージ。
【八月の週末は予約が取れなかった。空いているのは月末の平日一日だけ】
そうだよね。夏休みはホテルも一番の書き入れ時。リゾートホテルとなればなお更だ。
どうしようかと悩んでいたが、一人で考えててもラチが明かない。昼休みが終わるまでまだ少し時間がある。辺りを見渡し、誰も居ない事を確認して白石蓮に電話した。
「……それで、いつなら空いてるの?」
『八月三十日……その日しか予約取れないって……』
「そう、木曜日か……」
もしこの日に行くとなると、木曜と金曜、二日休まなきゃいけない。どう考えても無理だ。
「じゃあ、九月は? 九月なら空いてるんじゃない?」
『そうなんだけど、叔父さんが改装後のオープンは、九月二日にしたいって……だから撮影は八月中に終わらせたい。編集や現像、写真選びなんかの作業もあるからさ』
それならオーナーに、オープンの日を延ばしてもらえばいいんじゃないかと思った。でも……