『それは、大人の事情。』【完】

子供達の賑やかな声を聞きながら真司さんの肩に頭を乗せると、彼が穏やかな口調で話し出す。


「なぁ、梢恵、俺達の結婚……もう少し早めないか?」


実家で相談した時は、九月に結納をして、結婚式は十一月頃にという話しだった。


「早める?」

「あぁ、出来れば八月中に結納をして、九月に式を挙げたい」

「でも、九月だと、もう日にちがないから式場が空いているかどうか……」

「それはなんとかする。俺の知り合いに結婚式場に勤めているヤツが居るから聞いてみるよ」


どうしてそんなに急ぐんだろうと思った。が、さっきの真司さんの言葉を思い出し、そういう事かと納得した。


真司さんは、早く子供が欲しいんだね。沙織ちゃんが居ない寂しさを埋める為に……


「うん、分かった。知り合いの人に聞いてみて」


私もその方がいいかもしれない。白石蓮と決着を付けたらなるべく早く結婚して、何もかも忘れたいから。


「そう言えば、来週はもう森下の結婚式だな。同期の森下が居なくなると梢恵も寂しくなるな」


あ……そうだった。もう来週なんだ。


「送別会は明日だったよな」

「う、うん。そうだね」


気にはなっていたが、佑月とまだ、ちゃんと話しをしていない。佑月も明日で会社を辞める。いつまでも意地を張っていちゃいけないな。真司さんと結婚が決まったって報告して謝らないと……ね。


私のたった一人の親友なんだから……


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