『それは、大人の事情。』【完】
少し間を置いて、佑月が真剣な顔で聞いてくる。
「二人で彼の古里に行って撮影して、それでホントに忘れられるの?」
「……忘れるしかないでしょ? 私は真司さんと結婚が決まったし、彼も写真を撮ったら私を忘れるって言ってるんだから」
でも佑月は納得いかないって顔で、静かにスプーンを置き話し出した。
「私、間違ってたのかもしれない。親友なら梢恵の気持ちを一番に考えてあげなきゃイケナイよね」
「えっ?」
「梢恵には、ずっと本気の恋をしろって言い続けてきたでしょ。なのに、部長と結婚するのが梢恵の幸せだって勝手に決めつけて、アンタの気持ちを無視してた。
もし、梢恵が本気で好きになったのが白石蓮なら、反対すべきじゃないのかも……」
「佑月……」
「だから、梢恵が本気で白石蓮が好きなら……」
「違う!」
十歳も年下の子を好きになったバカな私を、必死で理解しようとしてくれてる佑月の気持ちは嬉しかった。でも、それはイケナイ事。彼の為にも良くないんだ。
「今はいいかもしれない。でも、十年経ったら彼は三十歳。私は四十歳だよ。その時、彼が私を選んだ事を後悔するかもしれない。彼はこれからなんだよ。もっと若い娘と付き合った方がいいの」
「もしかして、梢恵、怖いの?」
「怖い? 私が?」
「そう、将来あの子が梢恵を捨てて、若い娘に走るんじゃないかって。でも、そんな先の事心配して離れたら後悔しない?」