『それは、大人の事情。』【完】
なんだか変な展開になってきた。あんなに白石蓮と関わる事に否定的だった佑月が、今は彼と真剣に向き合えとか言ってる。
「後悔なんてしないよ。もう決めた事だから」
キッパリそう言い切ると佑月もやっと納得したのか、それ以上、何も言ってこなかった。でも、食事を終え洋食店を出る時、佑月は諭す様に強い口調で一言だけ発した。
「後悔しない別れ方しなさいよ」
苦笑いを浮かべ頷いたけど、後悔しない別れ方って、どんな別れ方だろう? そんな別れ方があるのなら教えて欲しい。
でもこれで、なんのわだかまりもなく佑月を送り出す事が出来る。心の底から「おめでとう」って祝福してあげられる。
そして、その夜の佑月の送別会は、佑月の結婚祝いという事もあり、他の部の同期も久しぶりに集まり盛り上がった。
一次会の居酒屋では、輸入食品事業部の先輩や、真司さんを含めた上司も居たから控えめだったけど、上司達が帰った後の二次会は皆弾けまくりで、入社当時の懐かしい話しや失敗談で大爆笑。こんなに笑ったのは、いつ以来だろう?
すっかり調子に乗ってお酒をガブ飲みし、三次会のカラオケ店を出る頃には、完全に泥酔状態だった。
送別会がお開きになりって最後まで残っていた同期が帰ると、佑月がフラつく私の肩を抱き、ヨタヨタと歩道を歩き出す。
「梢恵、大丈夫?」
「大丈夫! ぜーんぜん酔ってないし」
「バーカ! 酔ってないって言うヤツが、一番酔ってるものなのよ! 覚えときなさい」