『それは、大人の事情。』【完】
チャペルでの結婚式が終わると、今度は隣接する会館で披露宴が行われた。
招待客は、やはり会社関係の人が多く、どこかで見掛けた顔ばかり。なので、あちらこちらで挨拶を交わす声が聞こえ堅苦しい雰囲気はない。
程なく登場した新郎新婦。一緒に選んだ金糸銀糸が織り込まれた色打掛はとても雅で、佑月によく似合っていた。
そして、佑月が楽しみにしててと言ってたフレンチのフルコースは期待通りの美味。真司さんは自分達の披露宴の参考にしようと食材のチェックに余念がない。
そんな中、運ばれてくる料理に目もくれず、ひたすら高砂の二人の写真を撮り続けている人物が居た。佑月の妹の理央ちゃんだ。
佑月がお色直しで退席すると、私に気付いた理央ちゃんが駆け寄ってくる。
「梢恵さん、お久しぶりです。今日は来てくれて有難う御座います」
「うぅん、素敵な結婚式に呼んでもらえて感謝だよ。それより、理央ちゃん今日は大活躍だね」
カメラを指さしそう言うと、隣のテーブルに挨拶に行った真司さんの席に理央ちゃんを座らせる。
「お姉ちゃんは式場の専属カメラマンがいるからって言ったんだけど、こんな機会めったにないから勝手に撮ってるの」
「そう、頑張ってるね。理央ちゃんはホントにカメラが好きなんだ……」
「うん、あ、そう言えば、蓮君がまた専門学校に来ることになったんですよ」
「えっ……」
あの子、そんな事何も言ってなかった……
「梢恵さんに言われて、また写真撮る気になったって言ってました。もぅ~梢恵さんにはホント、感謝ですよ~」