『それは、大人の事情。』【完】

―――二日後の日曜日


今日は、カフェのギャラリーがオープンする日だ。気にならないと言えば嘘になる。あの時の写真が多くの人に見られると思うと妙にドキドキして落ち着かない。でももう、蓮と会う可能性がある場所には行ってはイケナイんだ。


なるべくその事は考えないようにして、真司さんとのんびりとした休日を過ごし、少し早い夕食を済ませて後片付けをしていた午後六時頃の事だった。私のスマホが鳴る。


「あ、オーナーからだ……」


きっと、ギャラリーを見に来てとお誘いの電話だろう。分かっているだけに電話に出るのが躊躇われた。


どうしよう。このまま無視してもいいけど、そんな事したら変に思うよね。でも電話に出れば断り切れない様な気がする。


鳴り続けるスマホのディスプレイを複雑な気持ちで眺めていたら、真司さんが不思議そうな顔をして「どうした? 出ないのか?」って後ろからスマホを覗いてきた。


「白石オーナー……?」

「あ、ほら、私がよく行ってたカフェのオーナーだよ。ギャラリーのコーナーを造るから改装してたの。多分、オープンしたってお知らせの電話だと思う」

「そうか、なら出ればいいじゃないか。何か都合の悪い事でもあるのか?」


そんな事言われたら出ないワケにはいかない。仕方なくディスプレイの上で指を滑らせる。


オーナーからの電話は想像通り、ギャラリーを見に来てというものだった。日曜だから昼に来てくれると思って待ってたのにと残念そうなオーナーの声を聞き、胸がチクりと痛んだ。


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