『それは、大人の事情。』【完】
「あっちって?」
『もう! 何とぼけてんのよ。ハーフボーイだよ。二人でお泊りして、写真のモデルしたんでしょ? あの子とは何もなかったの?』
「あ……」
『私には嘘付かないでホントの事言いなさいよ』
ホントの事か……まぁ、今更、隠す必要もないか。終わった事だしね。
「……何もなかった。っていうか、私の方がフラれた」
『はぁ? 何それ?』
佑月が驚くのも無理はない。佑月は私の方が蓮を拒否ってるって思っていたものね。
困惑している佑月に撮影時、何があったのかを話すと少し間があり、電話越しにため息が聞こえてくる。
『そう……梢恵、素直に自分の気持ちを伝えたんだね。なら、良かったじゃない。これで思い残す事なく前に進める。モヤモヤした気持ちのまま結婚しても部長に悪いしね』
「うん、そうだね。私もそう思う」
佑月は何かあったらすぐ電話してきてって何度も言ってくれてた。その優しさがとても有り難くて、やっぱり頼りになるのは親友の佑月だけだと改めて思う。
問題は何も解決してないけど、全て吐き出した事で少し気持ちが楽になった。
さっきより軽い足取りで改札を抜け、ホームへ続く階段を中頃まで下りた時、ふと思う。
あ、そうだ。このまま帰ってもどうせ一人なんだし、ちょっと寄り道していこうかな……
下り掛けた階段を駆け上がり、以前利用していたホームに急ぐ。