『それは、大人の事情。』【完】
蓮と同じ薄いブルーの瞳が潤んでいる。その目に、父親の決意を感じた。
そしてハウエルさんは、ギャラリーの蓮の写真を一つ一つじっくり眺め、自分が父親として何が出来るか、真剣に考えたいと言って帰って行った。
「ハウエル、今夜の便でイギリスに帰らなくちゃいけないみたいでね、出来たら直ぐにでも蓮に自分の気持ちを伝えたかったみたいだけど、とてもデリケートな問題だから……
一度向こうに戻って、蓮にとって一番いい結果になるよう色々考えてみたいって。僕もその方がいいと思ってさ」
「……そうだね」
きっと、蓮のお母さんもそれを望んでいるよね。
マンションに帰る道すがら、私は真司さんと沙織ちゃんの事を考えていた。
親は離れていても子供が一番大切なんだろうな。真司さんもハウエルさんと一緒だよね。何よりも沙織ちゃんが大切……だから離婚した絵美さんの所に毎日通っているんだ。
もしかしたら、一番苦しんでいるのは真司さんなのかもしれない。
そう思ったら真司さんに申し訳なくて、自分の事ばかり考えて不安になっていた事を猛烈に反省した。
きっと、専務の事も絵美さんの事も彼が解決してくれる。だから私は、私が出来る事をやって、真司さんを信じて待つしかない。
その日から、式場との打ち合わせは私一人で済ませ、真司さんに負担を掛けない様にしていた。でも、どうしても相談しなきゃいけない事が出てきたんだ。