『それは、大人の事情。』【完】
「素直になれ……梢恵。お前は自分をさらけ出せる男と一緒になった方が幸せになれる」
「それが、白石蓮だっていうの?」
「あぁ、アイツは若いが、なかなか男気のあるヤツだ。きっと、命懸けで梢恵を守ってくれる。アイツになら安心して梢恵を任せられるよ」
なんかおかしい。真司さんと蓮は、ほとんど口を利いた事などないはず。会えば挨拶する程度の関係だ。それなのに……なぜ?
「どうして白石蓮がそんな子だって分かるの?」
「それは……」
真司さんは、少し言いにくそうに苦笑いを浮かべていた。が、長い息を吐いた後、ハッキリとした口調で言ったんだ。
「アイツは、梢恵の幸せの為に、お前を愛する事をやめる決心をしたからだ」
確かに私は蓮に真司さんと結婚するから私の事は諦めて欲しいと言った。そして蓮も写真のモデルをするなら私を忘れると言った。でもなぜ真司さんがその事を知っているんだろう。
「それ、どういう事?」って、トボけて聞くと、予想もしていなかった言葉が返ってきた。
「それはな、梢恵を幸せにしたいのなら梢恵を諦めろって、白石蓮に言ったのは、俺だからだ」
「えっ……」
真司さんは蓮にそんな事言ったの? って事は、二人は会っていたの? 会って、そんな話しをしてたの?
何も言えなかった。ただ呆然と笑顔の真司さんを見つめる事しか出来なかった。
「やっぱりアイツ、梢恵には何も言ってなかったんだな。なら、俺から全て話さないとな……」
そう言うと真司さんは、私が知らなかった事実を話し出す。