『それは、大人の事情。』【完】
意味が分からない。仕方なくデスクの上にあった全く関係のないファイルを持って部長室のドアをノックした。ソッとドアを開け中を覗き込むと、仏頂面で資料を見ていた真司さんが視線を上げる。
「ドアを閉めろ」
「あ、はい」
なんだか凄くご機嫌斜めみたいだ。私、なんか気に障るような事言ったかな?なんて考えていたら、彼がデスクの前にあるソファーを指差し「座れ」と言う。
言われるままソファーに腰を下ろし真司さんを見つめると、突然立ち上がった彼が私の背後にまわり、後ろから抱き締めてきた。
でもそれは、優しい抱擁ではなく、まるで拘束され自由を奪われた様な状態。
「そんな色っぽい目で見るな」
「し、真司さん?苦しい……」
「分かってるのか?俺は今、最高に怒っているんだぞ?」
無理やり顔を横に向かされたと思ったら、唇を強く押し付けられ、益々息が出来なくなる。
「お前、北山と付き合ってた頃、相当激しいセックスしてたみたいだな?」
えっ……?修ったら、そんな事言ったの?
「アイツが言ってたぞ。今まで抱いた女の中で、梢恵が一番良かったって……だからお前の体を忘れられなかったってな。で、梢恵はどうなんだ?お前もアイツの体が忘れられないのか?」
「なっ……何それ……」
再び荒々しいキスが私の呼吸を止め、彼の大きな手がブラウスの中の膨らみを乱暴に揉みしだく。
真司さんが不機嫌な理由が、やっと分かった。彼は、修に嫉妬してる―――