『それは、大人の事情。』【完】
なんか不思議な気分だ。こうやって彼の寝顔を見てるだけで、なぜか癒される。けど、彼が寝返りをうち私に背を向けた時、ある事を思い出し慌てて立ち上がった。
そうだ。洗濯物……どこにあるんだろう?
キッチンの奥にあるドアを開けると小さなバスルームがあり、脱衣所には大量の洗濯物が山積みになっている。
あんな窮屈なジャージを着てたら体が休まらない。せめてパジャマだけでも洗っといてあげようと思ったんだけど、この天気じゃ、部屋干ししても数日掛かる……
考えた末、私のマンションに洗濯物を持っていき、乾燥機で乾かしてあげる事にした。
「なんか入れる物ないかな……」
白石蓮を起こさない様に居間の押し入れを開け、中を物色してると大きめの紙袋が目に付いた。その紙袋を取ろうとしたら、その横にあったパネルに引っ掛かっていたみたいでパネルも一緒に引っ張り出してしまった。
何気なくそのA4程の大きさのパネルを手に取ると、傘を差した女性の後ろ姿を写したモノクロ写真が入っていた。でも、水滴が付いた硝子越しに撮っているから女性の姿はぼんやりとしてる。
これと言って特に珍しい写真じゃない。けど、なぜか心がザワついた。
「なんだろう?この感じ……この写真どこかで見たような気がする」
でも、どんなに考えても思い出せない。
あ、呑気に写真なんて見てる場合じゃなかったんだ。彼が寝てる間に洗濯して持って来なきゃ……
パネルを押し入れに戻すと、紙袋に洗濯物を詰め込み白石蓮の部屋を出た。