ふたりの薗子
その☆のマークが、何か僕には
道標のように思えた。


薄暗い国立病院は、蔦の絡まる
ような古色蒼然たる佇まい。
煉瓦作りのエントランスは、
リノリウムが擦り減って

いかにも病院、と言う
雰囲気だった。

真鍮のドア・オーナメント、
ラワンの階段手摺り。

僕は、薗子と見紛うばかりの
汀子に、ただ黙ったまま追随した。

2階に、階段で昇り、左に折れて。
低い天井、
クレオソートの臭い.......。
< 93 / 134 >

この作品をシェア

pagetop