彼女は僕に恋をした。
ななみに会ったのは、働いているコーヒーショップで、ななみは、よく平日の昼間に来て、窓際の席で、カプチーノを飲んでいた。



僕が作るカプチーノが好きだと、ある日、ななみは唐突に言った。泡が丁度いい具合で、美味しいと彼女は言った。



そんなことを言われたのは、初めてで、僕は何だか嬉しいと思った。



本当のことを言ったら、家出をしてから、ろくに誰とも会話らしい会話をしたことがなかった。



だから、オーダーを取る以外の言葉が、出にくくなっている自分に、驚いた。



コトバが上手く出てこない。



僕はとっさに言った。




ななみは、寂しそうな顔をした。








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