それは、小さな街の小さな恋。
俊ちゃんは顔を上げ、また窓の外へと視線を上げる。
「ばあちゃんが倒れた時もさ、かのが居てくれて本当に良かったよ。」
初子ばあちゃんが倒れたとき。
私は何も出来なかった。ただ、怖くて怖くて。
こみ上げそうになる涙を抑えるだけで精一杯だった。
私にはどうすることも出来ないという情けなさ。
また大事な人を、大好きな人を失ってしまう怖さ。
「…怖かった。」
怖くて、怖くて。
立っていられないほど怖くて。
「怖かったよ、俊ちゃん…。」
身体中が痛くて、誰かの温もりに触れたくて、思わず俊ちゃんに抱きついた。
俊ちゃんの身体、あったかい。
首に回した腕に、俊ちゃんの手が重なる。
慰めるように摩るその手は、肩に乗せた頭へといつのまにか移動して、またいつものようにポンポンと撫でてくれた。