それは、小さな街の小さな恋。
「違う。俺は大二郎さんに憧れて医者になったんだ。」
俊ちゃんの力強い、芯の通った声が響く。
「なんでそんな当てつけみたいなことするの?」
「別に父さんはなんの関係もねえよ。俺は純粋に藪下 大二郎ていう医者が好きで、あんな大人になりたくて今までやってきただけだ。」
ああ、状況は全然分からないけど、今の言葉お父さんに聞かせたかった。
きっと泣くよ。私もなんだか泣きそうだけど。
「そうだとしても、貴方があの診療所を継ぐわけではないんでしょう?だったらうちの病院を継いだ方が今後の貴方のためよ。」
息子相手だとは思えないほどの冷たい言葉、冷たい声に、物影から盗み聞きしていただけの私の体温が下がっていくのが分かる。
なんだか、首のあたりがスースーする。