それは、小さな街の小さな恋。
「初子さん、どう?」
「あっ、ええ、だいぶ元気になりましたよ。退院も来週になりそうって担当の先生が。」
「良かったわね。」
安心したようにそういう加代さんにも、後ろで嬉しそうに頷く看護師さんたちにも迷惑かけたな。
「あっ!かのちゃん、良かったら。」
「え?栗ですか?」
突然ごそごそとし始めた加代さんが、渡してきたビニール袋の中身は、なんと栗。
「ええ。お隣さんにたくさん貰っちゃって。うちじゃ食べきれないから。」
「ありがとうございます。美味しそう。加代さんは何にしました?」
「マロングラッセ。」
「え、すごい。さすがですね。」
「娘がどうしても食べたいって言うからね。でも既製品を買った方が確実に安くついたわね。」
さて、私はどうしようかな。
そうだ。あれにしようかな。