それは、小さな街の小さな恋。
グツグツと泡を吹き始めたところで火を弱めると、お米が踊っている様子が見えた。
おお、美味しそう。いい感じだ。
剥いた栗を入れ、もう一度蓋をし蒸らし始めると、おかずの準備。
作り置きのナマスと、あと何を作ろう。
栗に夢中で何も考えてなかった。やっぱり、頭が回っていないらしい。
残ったお野菜の切れ端で、お味噌汁でも作るか。
そう思って、冷蔵庫からお味噌を取り出そうとしたとき、
「かの、悪いんだが…。」
その声に振り返ると、柱に寄り掛かって立っているお父さん。
眉間に皺を寄せて、物凄く申し訳なさそうな顔をしてる。
悪い予感しかしないんだけど。