それは、小さな街の小さな恋。


ここ数日ずっと考えていたが、なんでそう思うのか全く分からなくて、今日も八百屋で野菜を吟味しながら首をひねる。


お、大根も大分安くなってきたな。この前までなんて、とても買える値段ではなかった。


あ、ネギも安くなってる。それに太くて白くて美味しそうだ。

そろそろ鍋でもいいかな。まだ早いか。


次に目に付いたのはオクラ。

まだあったんだ。でも、たっかいな。


結局、手元に残ったのはネギと人参と大根だった。

さて、このまとまりのない野菜たちで何を作ろうかな、そう考えながらレジへとカゴを持っていくとそこに居たのは富澤君だった。



「よう、藪下。」

「富澤、君。」

「今日は富澤君が店番なんだね。」

「まあな。」


会話をしながら、購入した野菜たちをエコバッグへと流れるように入れていく富澤君はすっかり八百屋業が板についたようだ。


「藪下、なんかあったか?」

「え?なんで?」

「顔に、『悩んでます!』って書いてある。」


え?嘘。そんなに丸出しだった?



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