それは、小さな街の小さな恋。
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富澤君が帰って来る少し前に出来たこの焼き鳥屋さんは、商店街の南アーケードをくぐり100メートルほど進んだところに位置する。
新しいはずなのに何故か古くからここにあるかのような馴染み方をしている不思議なお店だ。
うちのお父さんとお豆腐屋のおじさんがよく使うお店でもある。
「乾杯。」
富澤君はビール、私は烏龍茶。
富澤君がビール、か。あの頃は想像できなかったな。
「へえ、こんなところが出来たんだな。」
「うん。少し前にね。」
「所々変わったけど、まあでもこの街自体はあんまり変わらねえな。」
「そうだね。」
確かにお店が変わったり、住んでる人が増えたり減ったり。日々色々と変化している。
でも、この街の雰囲気は小さい頃から変わらない。