それは、小さな街の小さな恋。


「藪下も。」

「へ?」

「藪下も、変わらない。」

「この前は変わったって言ったじゃない。」

「勘違いだったかな。」


なんだそりゃ。大人っぽくなったとか言わなかったけ?


しらっとそう言う富澤君の真意をはかりかねていると、頼んでおいた皮とつくねとなんこつが届いた。


わあ、美味しそう。

湯気が立っているそれは、なんとも食欲を誘う濃いたれの匂いが漂っている。


「でもまさか、富澤君が帰ってくるとは思わなかった。」


まずは手始めにつくねに手をつけながら話を変えた。


「まあな。俺もそんなつもりなかったよ。」

「富澤君は昔からこの街を出たがってたもんね。」

「藪下もだろ。」

「そう、だね。」


中学生のころ、富澤君と付き合っていたころはよくお互いでそんなことを言っていた。

それが今では二人とも実家を継ぐ気でいるのだから不思議だ。


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