それは、小さな街の小さな恋。
「藪下はあいつ以外を奥深くまで入れようとしない。その理由が、小さい頃から一緒にいる、じゃあ、もう皆手遅れだ。」
「そ、んな…。」
「俺も含め、これから藪下と出会う男全員あいつには敵わない。」
富澤君は、あー、言ってて胸くそ悪い、と手をうちわのようにパタパタさせながら吐き捨てると、残っていたビールを一気に飲み干し、店員さんにおかわりを頼んだ。
富澤君が言ってることは正論で。
きっと、私が探していた答えだ。
でもその理屈でいくと、私の一生の中で一番大切な人は俊ちゃんで。
そんな人と結婚できれば幸せだな。
なんて、他人事のように考えてみる。