それは、小さな街の小さな恋。
かもしれない、ってなんだ。
自分が自分で分からない。嫌になる。
でも、
「俊ちゃんにプロポーズされたの。全然愛のないプロポーズ。私、すごく嫌だった。」
それは誤魔化しようのない事実だ。
「藪下はさ、この先どうする気なんだ?」
「この先?」
「ああ。藪下診療所は、跡取りを見つけないと今の代で終わるだろ?それとも、藪下が今から医者になるのか?」
「私は…。私は、医者にはなれないけど、藪下診療所は潰したくない。」
「わがままだな。」
「うん。」
「それ、特定の誰かに継いでもらいたいと思ってるんだろう。」
「…うん。」
ああ、本当にわがままだ。私はずっと、周りには否定しながらそうなるのを待っていたのか。