それは、小さな街の小さな恋。


「お前、なんでこんなところに居るんだ?というかいつからここに居たんだ。」


驚いた表情のまま、街灯へと駆けてきた俊ちゃんは気付けば目の前に居て、少しだけ怒ったように言った。


「ごめん、連絡すれば良かったよね。」

「当たり前だろ?こんな所にこんな薄着で立っとくな。」


自分の格好を見下ろすと、Tシャツワンピに淡い桃色の薄手のパーカー、おまけにサンダルという冷え込み始めた秋の夜にはあり得ない姿。


ずっと考えていた。どうやって俊ちゃんと向き合えばいいんだろうって。


でも、考えても考えてもなかなか答えがでなくて。

もう会っちゃえ、と思って家を飛び出した。
その結果がこの服装だ。


今までは、どう話を切り出せばいいんだろうとか、どういう風に話を持っていけばいいのかと考え込んでいて気づかなかったが言われてみたら、すごく寒い。



「取り敢えず、中入るぞ。」


そう言うと、俊ちゃんは私の冷えた腕を掴んでぐいぐいと部屋へと連れて行った。

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