それは、小さな街の小さな恋。


小さな黒いローテーブルに二人分の肉じゃがと麦茶が並んだ。

どうやら今日は呑まないらしい俊ちゃんは、少し居心地の悪いような顔をしている。

だけど、そんなことは関係なしに話を切り出した。


「俊ちゃん。」

「うん。」

「この前の話なんだけど。」

「うん。」

「プロポーズ、断らせて下さい。」


痛くなってきた心臓に気を取られないように、俊ちゃんの目をただただ真っ直ぐ見つめてそう言う。


「私、俊ちゃんとは結婚できない。」

「理由だけ聞いてもいいか?」


表情を一切変えない俊ちゃんは、今までにない優しい声色で聞いた。


「俊ちゃんは、私のこと『妹』としか思ってないでしょう?でもね、私は俊ちゃんのこと、もう『兄』だなんて思えない。だから、」

「俺は、かののこと妹として見てねえよ。」

「え?」


予想していなかった言葉に驚いて、頭の中が真っ白になる。

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