それは、小さな街の小さな恋。


「うちの親父が大二郎さんのこと目の敵にしてるって知ってるか?」


え、全然知らない。初耳だ。


「だろうな。父さんの勝手なライバル意識だからな。大二郎さんも分かってないと思う。」


多分そうだろうな。お父さんからそんな話聞いたことない。それに、お父さんは人のマイナスの感情に疎いから。


「今、父さんが院長やってる病院は、もともと母さんの父親、俺にとっての祖父が経営してたんだ。大二郎さんに負けたくなかった父さんは、母さんに言い寄って大病院の院長の座を手に入れたと。」

「…そうなんだ。」

「でも、所詮は愛のない結婚だからな。俺が物心ついた頃には喧嘩ばっかりだったな。それが子供居なくなった途端、再婚だからな。正直、理解できない。」

「俊ちゃん…。」

「まあ、俺はばあちゃんに引き取られて、大二郎さんや梅子さん、それにお前と育って幸せだったから何も気にしてないけど。」


きっとこの言葉に、偽りはなくて。

それは、今までずっと一緒にいた私にはハッキリと分かる。

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