それは、小さな街の小さな恋。


「でも母さんが結構しつこくてな。ここ2、3ヶ月は電話もメールも頻繁で。今までは一度も連絡してこなかった癖にな。」


勝手だ。勝手過ぎる。

俊ちゃんのお母さんには一度しか会ったことがないし、お父さんなんて顔も分からないけど、今はもう嫌悪感しかない。


「それで、大二郎さんに相談したんだ。お前がいなり寿司持ってきてくれた日の夜だったな。」


そうだったんだ。全然知らなかった。


「そしたら大二郎さん、なんて言ったと思う?」


食べ終わった肉じゃがの器をテーブルに置いた俊ちゃんは、楽しそうに笑いながら言った。


「俺の息子になれって。」

「え?」

「養子縁組してやるって言ったんだよ。」


< 138 / 153 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop