それは、小さな街の小さな恋。
「でも母さんが結構しつこくてな。ここ2、3ヶ月は電話もメールも頻繁で。今までは一度も連絡してこなかった癖にな。」
勝手だ。勝手過ぎる。
俊ちゃんのお母さんには一度しか会ったことがないし、お父さんなんて顔も分からないけど、今はもう嫌悪感しかない。
「それで、大二郎さんに相談したんだ。お前がいなり寿司持ってきてくれた日の夜だったな。」
そうだったんだ。全然知らなかった。
「そしたら大二郎さん、なんて言ったと思う?」
食べ終わった肉じゃがの器をテーブルに置いた俊ちゃんは、楽しそうに笑いながら言った。
「俺の息子になれって。」
「え?」
「養子縁組してやるって言ったんだよ。」