それは、小さな街の小さな恋。
養子縁組…?!
予想もしなかった、耳慣れない言葉が俊ちゃんの口から出て驚き過ぎた私は、言葉も何も出てこない。
「嬉しかったよ。大二郎さんは昔から父親のような存在だったし、何よりも憧れてる人だからな。でも、断ったんだ。」
嬉しそうに、穏やかにそう言う俊ちゃんはそのまま続ける。
「お前と兄妹になるってことだろ?なんか違うなと思ったんだよ。」
「違う…?」
「ああ。今までは、お前のこと妹みたいに思ってたし、お前も俺を兄のように慕ってくれてると感じてた。でも、正式に兄妹となると想像したら違和感だらけだったんだよな。」
違和感…。
お互いに兄妹のように育った2人が、実際に兄妹になる。
俊ちゃんが、本当のお兄ちゃんになってしまう。
それは、近づきたい、触れたい、そう思うこと自体が禁忌となってしまうということ。