それは、小さな街の小さな恋。
俊ちゃんのお父さんの後継問題は、来年大学生の俊ちゃんの弟が継ぐということでなんとか決着がついた。
俊ちゃんに弟がいたことを知らなかった私とお父さんは大いに驚いたが、実は俊ちゃんも数年前まで知らなかったらしい。
そんな微妙な関係の俊ちゃんの実家に訪れたのは2週間ほど前。
想像通り、歓迎ムードではなかったが一応話は聞いてもらえた。
あと何回か足を運べば、きっと許しがもらえるはずだ。
そんな私たちの様子を見て、お父さんが『俺があいつに直接言いに行く!』と言ってくれたが、それは俊ちゃんと2人全力で止めた。
うちのお父さんをライバル視している俊ちゃんのお父さんと、何も知らないお父さん。
そんなお父さんが、息子さんを婿に下さいと直談判に行ったら。
火に油を注ぐどころじゃ収まらない。
結婚するからには、いずれ顔をあわせるときがくる。だから、それまでには何とかしようと俊ちゃんと決めた。