それは、小さな街の小さな恋。


「今までゆっくりし過ぎたのよ。」


加代さんは、呆れたように笑ってそう言った。


「かのちゃんが中々跡取りのこと考えようとしなかったのも、こうなるって心のどこかで期待してたからじゃない?」


うう、耳が痛い。そういえば、富澤君からも言われたんだよな。


「梅ちゃんなんかそれが当たり前のように言ってたわよ。」

「え?お母さんが?」

「俊ちゃんがこの街に来た時、大二郎先生は養子にしようか、って本気で考えてたこともあったの。」


お父さん、そんな前から考えてたんだ。


「でも、梅ちゃんがそれはダメって頑なに反対してね。俊ちゃんは鹿乃子の旦那さんになるんだからって。」


恐るべき、お母さん。

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