それは、小さな街の小さな恋。


「真広さんはお仕事?」


美雨ちゃんが熱をはかっている間、問診票を記入していたおばあちゃんは加代さんの問いにあからさまに嫌な顔をした。


「そうなのよ。子供が熱出したときくらい仕事休めばいいのにね。」


荒々しいボールペンの音ともに真広さんの愚痴が止まらなくなってしまったおばあちゃん。

友竹家のお嫁さんである真広さんは都内で働くキャリアウーマンで、それは友竹家に嫁ぎ、上の沙里ちゃんと風邪っぴきの美雨ちゃんを産んだ今でも変わらず。


それが原因でおばあちゃんと真広さんが静かにバトルし続けていることは、ここに住む者ならだれでも知っている。


「まあまあ、真広さんも美雨ちゃんのために必死なのよ。」


加代さんが呆れ顔でおばあちゃんを宥めるけど、なかなか愚痴は治らない。

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