それは、小さな街の小さな恋。
そうなると、やっぱり婿を取って二人でこの病院をやっていくのが一番いいのかな。
ということは、どうしてもお医者さんじゃないと駄目ってことだ。
お医者さんね。なかなか捕まらないよね。
まあ、身近に居るっちゃ居るけど。でも俊ちゃんは論外だ。
あんなデリカシーのない人、絶対に嫌。
「失礼します。」
診察室に入ると、デリカシーのない最低な医者が一人椅子に座っていた。
棚から出した美雨ちゃんのカルテと問診票を俊ちゃんに渡すと、ん、と短く返事をして受け取る。
「お前、まだ怒ってんのか?」
どうやら顔に出ていたらしい。
「俊ちゃんがデリカシーのない人間だってことは百も承知ですから、今更あんなことで腹なんか立てません。」
書類に目を通しながらパソコンを弄り始めていた俊ちゃんは、一旦手を止めて椅子ごとクルリと私の方に向き直し一言。