それは、小さな街の小さな恋。
「揉め?命令形?」
「いいから、揉めよ。」
態度を変える気のないこの男を、どう成敗してくれようかと考えていたら、廊下から咎めるような声がした。
「俊也。」
寝室に向かっていた初子ばあちゃんだ。
これにはさすがの俊ちゃんも、罰の悪い顔をして態度を改めた。
「肩を揉んでください、鹿乃子さま。」
「はい、よろしい。」
ほんと、俊ちゃんは初子ばあちゃんには弱いな。
「うわー、俊ちゃんの肩ばきばき。」
「だろ?もう痛くてさ。」
ものすごく固い俊ちゃんの肩になかなか指が入っていかない。
これをほぐし終えたときには、きっと私の肩もばきばきだろうな。
「ああ、いいね。」
ツボに入ったのか、本当に気持ち良さそうな声を出す俊ちゃんが何だか親父くさく感じる。