それは、小さな街の小さな恋。
「おばちゃーん、藪下ですー!」
「はーい。」
クリーニング屋さん特有の機会音が響く店内は少し暑い。
カウンターから声をかけると、すぐにおばちゃんが現れた。
「はい、電話もらってた先生の喪服。」
「ありがとう、おばあちゃん。」
受け取ったのは、クリーニングに出していたお父さんの喪服。
「誰かに不幸があったのかい?」
「うん、お父さんの大学時代の恩師が亡くなったんだって。遠方だから今から行ってお通夜にだけは出るって。」
「あら。じゃあ、午後からは休診?」
「そうなの…。」
ああ、気が重い。
今日予約が入ってる患者さんに電話しないと。