それは、小さな街の小さな恋。
ーーーーーーーー
ーーーーー
「鹿乃子、上手になったな。」
「そうかな?」
「なったなった。昔は初子さんが5つ終わらせてる頃に1つしか出来てなかったから。」
今も初子ばあちゃんが3つ終わったころに1つしか出来てないけどね。
6月に入り梅雨直前。
藪下医院休診日の今日は、お父さんと初子ばあちゃんと私の3人で先日収穫した梅の実のヘタ取り作業を初子ばあちゃん家の縁側で行っている。
初子ばあちゃんは器用に爪楊枝で、私はオーソドックスに竹串で、握力の強いお父さんはフォーク。
皆自分に合ったスタイルで黙々と作業する。
私も本当は、掘り過ぎてしまうため爪楊枝の方が好きだ。
でも、お母さんが愛用していたのは竹串。
だから、なんとなく毎年竹串を選んでしまう。