それは、小さな街の小さな恋。


久しぶりのお酒を早く飲みたくて、お米を手早くといでいると、俊ちゃんはなにやらヤカンを取り出してお湯を沸かし始めた。


「まさかお湯割りにするの?」

「ああ。」

「こんなに暑いのに?」

「馬鹿野郎。俺は冬でも夏でもお湯割りだぞ。」


何故か得意げにそういう俊ちゃん。


そうですか。ていうか、なんで今馬鹿野郎って言われたんだろう。


微妙に納得がいかず小首を傾げたまま蛇口をひねる。

よし、水が濁らなくなった。

研いだお米を御釜に移そうとすると、隣でお湯を沸かしていた俊ちゃんがいきなり叫んだ。


「あっち。」


どうやら湯気を上げ始めたヤカンに指が触れてしまったらしい。

< 46 / 153 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop