それは、小さな街の小さな恋。
久しぶりのお酒を早く飲みたくて、お米を手早くといでいると、俊ちゃんはなにやらヤカンを取り出してお湯を沸かし始めた。
「まさかお湯割りにするの?」
「ああ。」
「こんなに暑いのに?」
「馬鹿野郎。俺は冬でも夏でもお湯割りだぞ。」
何故か得意げにそういう俊ちゃん。
そうですか。ていうか、なんで今馬鹿野郎って言われたんだろう。
微妙に納得がいかず小首を傾げたまま蛇口をひねる。
よし、水が濁らなくなった。
研いだお米を御釜に移そうとすると、隣でお湯を沸かしていた俊ちゃんがいきなり叫んだ。
「あっち。」
どうやら湯気を上げ始めたヤカンに指が触れてしまったらしい。