それは、小さな街の小さな恋。
少し暑いので扇風機を用意していると、俊ちゃんは蚊取り線香に火をつけていた。
それを終えると、ゆっくりと縁側に腰掛け、二人でお酒に口をつける。
改めて口をつけた梅酒は、最初少し温くて。でもすぐに冷たくて美味しいそれが喉を通って行った。
ああ、やっぱり美味しいな。初子ばあちゃんの特製梅酒は。
「一口くれ。」
隣を見ると、俊ちゃんが手を出してきていた。
その手に梅酒を渡すと、俊ちゃんは自分の焼酎を少し上に上げる。
「いるか?」
「いらなーい。」
焼酎飲めないこともないけど、この暑さでお湯割りは私には無理だ。
「美味いな。」
「でしょう?それ、去年の分だよ。」
「へえ。今年はもう漬けたのか?」
「うん。」
俊ちゃんから帰ってきた梅酒は4分の1ほど減っていた。