それは、小さな街の小さな恋。


母の病気が見つかったのは亡くなる2年前のこと。


『お父さんは医者でしょう?なんでお母さんの病気を治せないの?』


何度そうやってお父さんのことを責めただろう。


中学生なんだから、言っていいことと悪いことの区別くらい分かっていたはずなのに。


完全なる八つ当たりだ。

お母さんがいなくなってしまうかもしれないという現実が怖かった。ただただ、怖かったのだ。


学校で期末テストを受けている最中、担任の先生から呼び出された私は、先生の車で病院に向かった。


そこに居たお母さんは、今朝まで点滴や酸素など様々な管が繋がっていたはずなのに、何故か何も繋がってなくて。


簡素なベッドの上で横たわるお母さんは、すごく穏やかな顔をしていた。

それだけはよく覚えていた。

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