それは、小さな街の小さな恋。
それからのことはよく覚えていない。
どういうお葬式だったのか、誰が来てくれたのか。
多分、クラスのみんなや担任の先生、所属していたバレー部のみんなも来ていたはずだ。
あと、当時付き合っていた富澤君も。
だけど、全然覚えていない。
気づいたら自分の部屋のベッドの上にいて、気づいたらもう5日も外に出ていなかった。
そんなとき、私を連れ出してくれたのは俊ちゃん。
カーテンも締め切り、電気もつけていなかったあの暗い暗い闇の中に手を差し伸べてくれたのは俊ちゃんだった。
差し伸べられた手は、少し筋張っていて、手のひらは硬くて、かさかさしていて。
すごく、すごく温かった。