それは、小さな街の小さな恋。
その頃、ちょうどハタチになり隣町の大学に通っていた俊ちゃんはすっかり大人の男の人となっていた。
そんな俊ちゃんは、私と一緒にお父さんに謝ってくれた。
私とお父さんを救ってくれた人。
そして、お母さんが残してくれた手紙を一緒に読んでくれた人。
私に、ふたたび光をくれた人。
「会いたいな。」
こんなこと言ったって仕方ないのに。
なんで、私は何年も経つって言うのにこんな馬鹿みたいな願望を口にしてしまうのだろう。
それは叶いっこないことだと、この11年間で分かってるはずなのに。
胸から込み上げてくるマグマみたいに熱いものに耐えられなくなって、ぎゅっと拳を握ったとき、
「ああ、俺も。」
隣の俊ちゃんが、そう呟いた。