それは、小さな街の小さな恋。
「昔、俊ちゃんも叩いたことあるよね。」
毎年、12歳小学校6年生が叩くことになっている神輿の上の太鼓隊に俊ちゃんも選ばれたことがあった。
「そうそう。それで、かのちゃんも『私も乗りたいー!』て駄々こねてね。」
「え?覚えてない。」
「梅ちゃんが必死に宥めてたんだよ。」
昔、お母さんの手を引っ張ってこの道を歩いた。
お母さんの手はいつでも暖かくて。
繋ぐといつも心の奥底からぽかぽかと温まっていった感覚を覚えている。
私が今着ている浴衣に身を包んだお母さんと見上げたこの景色はあまり変わらない。
まあ、視線の高さは変わったけれど。