それは、小さな街の小さな恋。
神輿が通りすぎ、初子ばあちゃんとお参りすると、初子ばあちゃんは眠くなったといって家へと帰ってしまった。
私は、いつもと違う商店街を少し散策することにする。
一年に一度の特別な日である今日は、商店街以外のお店も多く出店している。
もちろん、商店街のお店でで店を出しているところも多い。
お肉屋さんのコロッケはいつも通り大盛況。
この間、駅の近くにできたケーキ屋さんについて盛り上がった花屋のお姉さんは、なにやら花の冠を打っている模様。
へえ、新しいな。
あ、八百屋さんが出店してる。いつもはしてないのに。
近づいてみると、きゅうりの一本漬を出しているのが分かる。
美味しそう。買ってみようかな。
そう思って巾着袋から小銭入れを取り出しながら近づくと、
「あれ、もしかして藪下?」
なんだかとても懐かしい声が聞こえた。