それは、小さな街の小さな恋。
「まあ、色々手続きやらで忙しくて店には出てなかったからな。」
「そう、なんだ…。」
笑うと、日焼けした顔から真っ白な八重歯が覗く。
そんな彼の変わらない表情に、なんとなく安心してしまった。
「藪下は、やっぱり診療所で働いてるんだな。」
「うん。」
やっぱり、って。
あの頃の私は、いつかはこの街を出て行く、家の犠牲にはならないなんて反抗しまくっていたはずなのに。
なんで、『やっぱり』なの?